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猫の背中

背中が痛い。どの程度痛いかというと、身動きが取りづらい程度に痛い。身動きが取れない訳ではないから、こうしてキーボードを叩いて、せっせと駄文を綴っている。お付き合い願いたい。

ことの始まりは猫にある。

僕は陽の当たらない、南向のマンションの1階に住んでいる。猫のひたい程度のベランダがあり、男一人の洗濯物を干すには困らないが、直ぐそこが道になっておりある程度の人の行き来があるため、一文の価値にもならないプライバシーを守るためにカーテンを閉めきって生活している。そうやって外から中の様子が見えないためだろうか、春先頃から猫がベランダに遊びに来るようになった。猫が好きであるから、予期せぬ野生動物の来訪を喜んだことは言うまでもない。

春・夏・秋と仲良く過ごしてきた我々であったが、気温の低下と共に猫達が遊びに来る機会も急速に減っていった。以前は毎朝ベランダで寝ていたものだが、師走に入ってからは一度も見ていなかった。次の春にはこの部屋から出ていくことが確定している身であるから、二度と会うことができないかも知れない。猫たちを想いながら、独り忘年会を執り行なったりもした。僕は初めて彼らの存在を認めた日の驚きや、彼らと過ごした日々を懐かしく思い返していた。もう彼らと会うことはないのだろうか。

ところが、今日になって帰ってきたのだ!猫が!

嬉しくて僕は時間が経つのも忘れて彼の姿を見つめた。最近どうしてんの、どこに住んでるの、他の奴らは元気でやってるか?

マンションの間を縫って太陽光がベランダに差し込んでいた。その日差しがよほど暖かかったのか、猫は全身を使った大きな伸びをした。それにつられて僕も伸びをした。んーーーーっと。

そして、背中に一筋の閃光が走った。ベッドに倒れこむ。なんということだ。今日はクリスマスプレゼント(自分宛)を買いに行く予定だったのに。お昼ごはんもまだ食べてないのに。

息も絶え絶えにベランダを覗くと、猫の姿はもうどこにも無かった。