人のタブーを笑うな

学部時代に「文化人類学入門」的な一般教養科目を履修したことがある。

当時その授業は「空から単位が降ってくる」と形容されるほどの楽勝科目で毎年多くの履修生で賑わっていた。

僕も全く単位を気にしていなかったかといえば嘘になるが、実際に受けてみると案外興味深い点も多く、学びの多い授業の一つだったと記憶している。

その授業の中で「タブー」についての小話があった。

タブーはもともと文化人類学で生まれた言葉で、Wikipediaによればポリネシア語で「強く徴づけられたもの」を意味する

文化には必ず何かしらのタブーがあって、そのタブーが生まれた背景を探ることはその文化を知るために必要なものであり立派な研究対象だ...みたい話だった気がする。

一般的にタブーというと「よくわからないが触れてはいけないもの」みたいな意味で使われる。その発展として「打破すべきもの」というニュアンスを帯びることもある。僕もそれまでそういう認識をしていたので、印象に残ったのだと思う。

この話を踏まえれば、その強く徴づけられたものが生まれた背景には何かしらの文化があるということだ。

自分には理解できないことを他人が盲信していると感じられる時、その対象にタブーの烙印を押し、大したことがないものと切り捨ててしまうことがある。

しかし、その烙印の下には言葉では説明できない、その人、その集団の文化が眠っていて、実はそれがとても大切なものだったりするのではないか。

レッテルを貼り付ける前に、どうしてそういうことになっているのだろうと考える余裕を持ちたい。

その「エンジニア採用」が不幸を生む

本書は巻頭で企業経営者や採用人事、転職を考えているエンジニアなどが想定読者として掲げられている。

第3章「不幸になる要因はエンジニアサイドにもある」という章題からもわかるように、実際に転職に臨む当事者としてエンジニアが知っておくべきことも多く、エンジニアのキャリアを考えるという観点でとても有意義な内容だと感じたので、転職活動をする前に一度目を通してみるといいのではないかと思う。僕は人材紹介会社とやりとりしたことがないが、彼らのやり口に注意が必要、みたいな話もあって面白い。採用面接で聞かれる質問とその対策を論じた書籍がいくつかあるが、転職するのであれば間違いなくそれらの前に本書を手に取るべきだろう。

と、(このブログを読んでいる人はエンジニアが多いと思うので)エンジニアが読むことを想定した感想をまず書いたが、僕はスタートアップでCTOをやっているので、掲げられた想定読者の中で企業経営者や採用人事に近い立場にもいる。その立場からの感想を述べると、本書は「CTOのエンジニア採用・評価という側面からの役割を指摘しているとても貴重な書籍」だった。

CTOというととかく最高技術責任者という字面から技術的な側面が取り上げられがちだが、技術だけ見てればOKなんて事はない。最近でこそVP of Engineeringを別にたてるみたいな話も出て来ているが、そういうポジションを置いたとしてもCTOというポジションに求められる役割の輪郭がはっきりしないのは、エンジニア採用に果たすことが期待される部分の存在によるところが実は大きいのではないだろうか。

その重要性を考えればCTOがエンジニア採用に深く関わるべきである事は自明だと思う(少なくとも弊社ではそうだ)。しかし、いざその立場になってみると、自分が何を期待されているのか、何をすればいいのかはその必要性ほどは自明ではない事が肌身に沁みる。僕の場合、前任者がいないからなおさらそう感じるのかもしれない。

本書を読んでいるといたるところで「CTO」という単語が出てくる。それぞれの文脈で想定されている企業規模や文化、社長の考え方は違うが、読み進める中で「CTO」にぶつかるたびに、僕の中で曖昧だった境界線が少しだけはっきり見えるようになったような気がする。もちろんそこには取捨選択があるが、スタートアップのCTOで本書を読んで自らを省みることが一切ないとしたら、その人はスーパーマンかエンジニア採用の重要性に未自覚かのどちらかではないか。

というわけで、僕は今までになくエンジニア採用においてCTOが果たすべき役割に自覚的になれたという点でもって、本書にとても感謝したいと思っている。

どういう人を雇うべきか

CTO就任以来、エンジニア採用に関わり続けている。外の人からは「凄い人がたくさん入社して、順調ですね」などと言われることが多いが、当人にはそんな気はほとんどない。苦悩の日々だ。

スタートアップが抱える人材採用の問題には様々な側面があるが、「どの人を採用すればいいのか」というのは特に重要な問題だ。

有り体に言えば「いい人がいれば雇いたい」というのが心の内な訳だが、どの人がその「いい人」なのか、どうやってそれを判断するのか。それを考えるのがエンジニア採用という観点から見た時のCTOの重要な役割の一つだと思う。

どういう人を雇うべきか?欲張って挙げていけば切りがないが、最近特に思うことを3つばかり書いてみる。

自称ゼネラリスト、他称スペシャリスト

ゼネラリストとスペシャリスト、どちらを目指すべきかと言えば、僕はゼネラリストを目指すべきだと思う。トンカチしか知らない人は、全ての問題をクギだと考えてしまう。一つのことを突き詰めるのはいいが、それしか知らないというのは色々な意味で危うい。

だが、困った時に頼るのはその道のスペシャリストだ。「あの人は◯◯が凄い人だ」と周りに認められるものがないと、キャリアという観点から見ても厳しいと思う。

ラーニングアニマル

ラーニングアニマルという単語は How Google Works に出てきた。言い換えるなら学習意欲と能力を持っている人。

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)  ―私たちの働き方とマネジメント

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント

  • 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ,土方奈美
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/10/09
  • メディア: 単行本
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ラーニングアニマルで構成される組織に、新たなスペシャリティを持つ人が加わったら、組織はその人から多くのことを学ぶだろう。そうやって学習する組織は強くなっていく。

文章が上手い人

何をチームと共有すべきかは教育できるが、文章を上手くするのは容易ではない。

文章が上手いことは、ここに並べるだけの価値があると思う。そういう人は活字で意思疎通ができるだけでなく、人が分かるように書くことができる。

傾向として、アウトプットがスムーズな人の方が、そもそも何を共有すべきかを心得ていることも多い気がしている。


果たして僕は「どういう人を雇うべきか?」ということを四六時中考える訳であるが、そうしていると否が応にも「自分は雇われるに値するのか?」ということが頭をもたげてくる。

二重の意味で苦悩の日々は続く...。